テレワークやクラウドサービスの普及により、企業のIT環境はここ数年で大きく変化しました。一方で、サイバー攻撃の多くはいまだに「IDとパスワードの突破」から始まっています。
こうした背景から、近年あらためて注目されているのが**多要素認証(MFA:Multi-Factor Authentication)**です。
本記事では、なぜパスワードだけでは不十分なのか、MFAがなぜ今“必須”と言われるのか、そして企業が導入時に注意すべきポイントについて解説します。
パスワード認証が危険と言われる理由
流出・使い回し・フィッシングの増加
パスワードは本来、本人確認のための重要な情報ですが、現実には以下のような問題が起きています。
- 複数サービスで同じパスワードを使い回している
- フィッシングメールにより簡単に入力させられてしまう
- 情報漏洩事件で流出した認証情報が闇市場で売買されている
ランサムウェア被害の多くも、VPNやクラウドサービスのID・パスワードが盗まれるところから侵入が始まっています。
つまり、パスワードはもはや「秘密情報」として機能しにくくなっているのが現状です。
クラウド利用拡大で攻撃対象が増えている
以前は社内ネットワークに入らなければ業務システムにアクセスできませんでした。しかし現在は、
- Microsoft 365
- Google Workspace
- 各種SaaSツール
など、インターネット経由で利用するクラウドサービスが業務の中心になっています。
その結果、攻撃者にとっては社内に侵入しなくても、認証情報さえ盗めばアクセスできる環境が増えているのです。
多要素認証(MFA)とは何か?
3つの認証要素
多要素認証とは、以下の3つの要素のうち、2つ以上を組み合わせて本人確認を行う仕組みです。
- 知識情報:パスワード、暗証番号
- 所持情報:スマートフォン、認証トークン、ICカード
- 生体情報:指紋、顔認証、虹彩認証
たとえパスワードが漏れても、スマートフォンなどの「所持情報」がなければログインできないため、
不正アクセスの成功率を大幅に下げることができます。
ワンタイムパスワードだけでは不十分なケースも
MFAというとSMSで届くワンタイムパスワードを思い浮かべる方も多いですが、近年は以下のようなリスクも指摘されています。
- SIMスワップ攻撃によるSMS乗っ取り
- フィッシングサイトで認証コードまで入力させる手口
そのため、認証アプリや端末認証、生体認証などを組み合わせたより強固なMFA運用が推奨されるケースが増えています。
なぜ今、企業にMFA導入が求められているのか
大手クラウドサービスがMFA前提の設計へ
MicrosoftやGoogleなどの主要クラウドサービスでは、管理者アカウントや重要操作に対してMFAが必須となるケースが増えています。
一部では、MFA未設定のアカウントに利用制限がかかることもあります。
これは「MFAがあって当たり前」というセキュリティ設計思想が、すでに標準になりつつあることを意味します。
ガイドライン・保険要件への影響
情報セキュリティに関する各種ガイドラインでも、MFAは重要な対策として位置づけられています。
また、サイバー保険の加入条件としてMFA導入が求められるケースもあり、経営リスク管理の観点からも無視できない存在になっています。
MFA導入でよくある失敗パターン
サービスごとに設定がバラバラ
多くの企業では複数のSaaSやクラウドサービスを利用していますが、
- サービスごとにMFA設定方法が異なる
- どこまで設定したか把握できていない
- 退職者のアカウントが残り続ける
といった運用上の問題が起きがちです。
結果として、一部のサービスだけが無防備な状態で残ることも珍しくありません。
利便性が下がり、例外運用が増える
認証が煩雑になりすぎると、
- 「この端末は例外にしよう」
- 「この部署だけMFA免除」
といった例外ルールが増えてしまい、かえってセキュリティレベルが下がることもあります。
MFAは技術導入だけでなく、業務に無理なく組み込める運用設計が非常に重要です。
ゼロトラスト時代は「認証の一元管理」がカギ
ネットワークではなくIDを信頼の基準にする
近年のセキュリティでは「社内にいれば安全」という考え方ではなく、
すべてのアクセスをIDベースで検証するゼロトラストモデルが主流になりつつあります。
- どこからアクセスしても
- どの端末を使っても
- 毎回正しく認証されるかを確認する
この考え方では、認証基盤がセキュリティの中心になります。
SSO+MFAで利便性と安全性を両立
複数サービスを使っている企業ほど、
- シングルサインオン(SSO)でログインを一本化
- そこにMFAを組み合わせる
という構成が有効です。
これにより、
- ログイン回数の削減
- 退職・異動時の一括アカウント制御
- 監査ログの集中管理
が可能となり、セキュリティと業務効率を同時に高めることができます。
SmartGateで実現できる認証セキュリティ
こうした認証管理の課題を解決する手段として、有効なのが認証基盤の統合です。
SmartGateでは、
- 複数クラウドサービスへのログインを一元管理
- 全サービスに対してMFAポリシーを統一適用
- 社員アカウントの作成・削除を効率化
- 管理者の運用負荷を大幅に削減
といった仕組みを実現できます。
「MFAは導入したが、管理が追いつかない」
「サービスが増えるたびに設定が煩雑になる」
こうした悩みを抱える企業にとって、認証の入口をまとめること自体が最大のセキュリティ対策になります。
まとめ:MFAは“導入するか”ではなく“どう運用するか”
もはや、パスワード単独の認証では企業システムを守ることはできません。
MFAは今後すべての企業にとって標準装備となっていく対策です。
しかし本当に重要なのは、
- 継続して正しく運用できるか
- IT担当者の負担が増えすぎないか
- 退職・異動などの人事イベントに即応できるか
といった運用面まで含めた設計です。
特に中小企業では、限られたリソースの中でセキュリティ対策を進める必要があります。
だからこそ、認証管理をシンプルに集約し、無理なく続けられる仕組みづくりが重要になります。
MFA導入を検討する際は、ぜひ「認証の一元管理」という視点からも対策を見直してみてはいかがでしょうか。





