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タグ: 通信の暗号化

  • VPNの限界が示す、企業セキュリティの新しいかたち

    VPNの限界が示す、企業セキュリティの新しいかたち

    はじめに:VPNが抱える“見えにくいリスク”

    リモートワークやクラウド活用が進む中、多くの企業が採用しているのがVPN(Virtual Private Network)です。
    インターネット上に暗号化された「仮想専用線」を作り、安全な通信経路を確保できることから、コロナ禍を機に導入が一気に進みました。

    しかし近年、VPNはもはや“万能ではない”ことが明らかになってきています。
    利便性の裏には、運用の複雑化や脆弱性、そして「信頼し過ぎる構造」に起因するセキュリティリスクが潜んでいるのです。

    VPNの仕組みとその課題

    暗号化通信で守る仕組み

    VPNは、社員の自宅や外出先からでも社内システムへ安全にアクセスできる仕組みです。通信を暗号化し、第三者による盗聴や改ざんを防ぎます。

    しかし、この“安全なトンネル”こそが、近年では攻撃者にとっても好都合な経路になりつつあります。

    攻撃の温床にもなり得るVPN

    2023年以降、VPN機器の脆弱性を悪用したサイバー攻撃が相次いでいます。
    特にFortinetやPalo Altoなどの装置で発見されたゼロデイ脆弱性は、修正前に不正アクセスへ悪用され、被害が世界中に拡大しました。

    また、VPNは「社内ネットワーク全体に接続を許す構造」であるため、1つのアカウント情報が漏洩するだけで、攻撃者が社内システム全体へ侵入できてしまいます。
    実際、VPN経由でランサムウェアが侵入し、製造業の生産ラインが停止した事例も報告されています。

    運用負担とパフォーマンスの限界

    VPNは便利な反面、接続ユーザーや機器の管理が煩雑になりやすい仕組みです。
    証明書の更新、パスワード管理、接続台数の制御、そして負荷分散。運用担当者にとっては手間がかかる要素が多く、設定ミスが重大なリスクにつながることもあります。

    さらに、VPNを通じてクラウドサービス(Microsoft 365やGoogle Workspaceなど)にアクセスすると、通信が一度社内を経由するため、速度低下や帯域の圧迫が発生。
    結果として、ユーザーがVPNを避けて私用端末や個人アカウントを使う「シャドーIT」も増えています。

    新たな潮流:ゼロトラストと分離型アクセス

    「信頼してから守る」から「信頼しない前提で制御する」へ

    こうした課題を背景に、今注目されているのが**ゼロトラスト(Zero Trust)**という考え方です。
    これは「社内ネットワークだから安全」という前提を捨て、すべてのアクセスを検証・制御するという設計思想です。

    VPNが“内部への入口”を作る発想であるのに対し、ゼロトラストは“入口自体を作らない”方向に進化しています。

    セキュアブラウザという新たな選択肢

    このゼロトラストの思想を具体化する手段の一つが、セキュアブラウザ型アクセスです。
    これは端末から社内ネットワークやクラウドサービスへ直接アクセスするのではなく、クラウド上の仮想ブラウザを経由して操作する方式。
    デバイス上にデータを残さず、ファイルの持ち出しや感染拡大のリスクを根本から排除できます。

    特に日本国内では、こうしたセキュアブラウザを活用したソリューションが広がりを見せています。
    たとえば「SmartGate」は、VPNの代替・補完ツールとして注目されるサービスのひとつです。

    SmartGateにみる補完的なアプローチ

    SmartGateは、ユーザーを社内ネットワークに“入れない”設計により、感染経路を遮断します。
    従来のVPNが担ってきた「通信の暗号化」に加え、「端末からのデータ流出防止」「アクセス範囲の最小化」を実現。
    また、災害発生時には管理者が全社員にPush通知を送る機能を備えており、BCP(事業継続計画)の観点からも高い評価を受けています。

    こうしたセキュアブラウザの導入は、「VPNを捨てる」ことではなく、「VPNで守れない部分を補う」ための現実的な選択肢といえます。

    企業が今取るべき方向性

    VPNを安全に使い続けるために

    • 多要素認証(MFA)の導入
    • アクセスログの常時監視
    • 不要アカウント・証明書の削除
    • 脆弱性パッチの即時適用

    これらの基本対策を徹底することで、VPNのリスクを大幅に軽減できます。

    同時に“次世代アクセス”への移行を視野に

    クラウド中心の業務環境では、セキュアブラウザやZTNA(ゼロトラスト・ネットワークアクセス)への段階的な移行が現実的です。
    VPNを基盤としながらも、より細やかなアクセス制御やデータ分離を実現することで、従来の「全員に開放された社内ネットワーク」からの脱却を図れます。

    まとめ:VPNの信頼を前提にしない時代へ

    VPNは長年、企業の遠隔業務を支えてきました。しかし、サイバー攻撃の高度化とクラウド化の進展により、その構造的な弱点が明らかになっています。

    これからは、「VPNを使うかどうか」ではなく、「どう補い、どう次の段階に進むか」が問われる時代です。
    ゼロトラストの思想に基づき、VPNとセキュアブラウザを組み合わせた多層的な防御を構築することが、企業のセキュリティを次のレベルへ引き上げる鍵となるでしょう。