― 脱VPNは大企業だけの話ではない ―
近年、VPNを起点とした情報漏えい・ランサムウェア被害が増え、「VPNはもう危ない」という認識が広がっています。
一方で中小企業では、
- 専任の情シスがいない
- セキュリティ製品に大きな投資はできない
- でもリモートアクセスは必要
という現実があります。
本記事では、中小企業でも導入・運用が可能なVPN代替策を、段階的に解説します。
なぜVPNをやめたいが、やめられないのか
VPNが使われ続けている最大の理由はシンプルです。
- 社内システムにそのままつながる
- 仕組みが分かりやすい
- 昔から使っている
しかしセキュリティ的には、
- 一度入られると社内ネットワークが丸見え
- ID・PW漏えいで簡単に侵入される
- 装置の脆弱性が定期的に狙われる
という構造的に不利な仕組みでもあります。
そこで注目されているのが、「社内に入れない」リモートアクセス設計です。
代替策①:クラウドサービスは“直接ログイン型”に切り替える
まず最も簡単で効果が高いのがここです。
VPNが不要になる代表例
- Microsoft 365
- Google Workspace
- クラウド型会計・勤怠・営業管理
これらは本来、VPNなしで安全に使う前提で設計されたサービスです。
やるべきことは:
- VPN経由でアクセスしている → 直接アクセスに変更
- MFA(多要素認証)を必須化
- 管理画面へのアクセス制限
つまり、
社内ネットワークに入らせず
サービス単位でアクセス制御する
という形に変えるだけで、VPN利用範囲を一気に縮小できます。
代替策②:ZTNA(ゼロトラスト型リモートアクセス)
VPNの代替として最も本命なのが**ZTNA(Zero Trust Network Access)**です。
VPNとの決定的な違い
| 項目 | VPN | ZTNA |
|---|---|---|
| 接続先 | 社内ネットワーク全体 | 特定アプリのみ |
| 認証 | 最初だけ | 常時評価 |
| 侵入後 | 横展開しやすい | 他へ行けない |
ZTNAでは、
- ユーザー
- 端末状態
- 接続場所
などを評価した上で、許可された業務アプリだけに接続させます。
攻撃者が侵入しても、
他のシステムに移動できない構造
になっているのが最大の強みです。
代替策③:リモートデスクトップ+アクセス制御
予算を極力抑えたい場合、次の構成も現実的です。
仕組みの考え方
- 社内PCは社外から直接触らせない
- リモート操作用の中継環境のみ公開
- そこへのアクセスは厳重に制御
例えば、
- 仮想デスクトップ
- リモート操作サーバ
- セキュアブラウザ経由アクセス
などを組み合わせることで、
データは社内から一切出ない
操作だけが転送される
という安全性の高い構成が作れます。
特に、設計図・顧客情報・個人情報を扱う業種では有効です。
代替策④:そもそも社内システムをクラウドへ移す
根本的な解決策としては、
「社内にあるからVPNが必要」
なら、社内に置かない
という発想も重要です。
クラウド移行のメリット
- 社内ネットワーク自体を外部公開しない
- アクセス制御がサービス側で完結
- 災害対策・BCPにも強い
もちろん一気に全部は無理でも、
- ファイルサーバ
- 勤怠・申請
- 営業管理
などから段階的に移行すれば、VPN依存は確実に減っていきます。
中小企業が現実的に進める段階モデル
いきなりゼロトラスト完成形を目指す必要はありません。
ステップ①:VPNでしか使えない業務を洗い出す
- 本当にVPNが必要な業務は何か
- 既にクラウド化できている業務は?
ここを整理するだけで、VPN利用者はかなり減ります。
ステップ②:ID管理とMFAを先に固める
どんな方式でも、
- IDが乗っ取られたら終わり
なので、まずは
- 統合ID管理
- 多要素認証の全社導入
を先行させるのが最も効果対コストが高い対策です。
ステップ③:高リスク業務からZTNA・セキュアアクセス化
- 管理者作業
- 基幹システム
- 個人情報を扱う業務
ここからVPN以外の接続方式へ切り替えると、事故リスクを大幅に下げられます。
なぜ今「VPN代替」が経営課題になっているのか
最近のセキュリティ事故では、
- 被害額:数千万〜数億円
- 取引停止
- 社会的信用の失墜
といった影響が中小企業でも現実になっています。
しかも侵入経路は、
VPN or RDP(リモート接続)
が圧倒的多数を占めています。
つまりVPN対策は、
- ITの話ではなく
- 経営リスク対策そのもの
という位置付けに変わってきているのです。
まとめ:VPNをやめることより「社内に入れない設計」が本質
VPN代替策の本質は、
VPNを別の製品に置き換えること
ではなく
ネットワークに入れない構造を作ること
にあります。
中小企業でも、
- クラウド直接アクセス
- MFA徹底
- ZTNAやセキュアアクセス導入
- 社内システムの段階的クラウド化
を組み合わせることで、無理なく脱VPNへ移行可能です。
「全部ゼロトラストにしなきゃ」と考える必要はありません。
VPNを減らすところから始めるだけでも、リスクは大きく下げられます。






