お役立ちコラム集

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VPNリプレースの現実解 ― 情報漏洩事件増加の今こそ、ネットワークを再設計するタイミング

近年、企業で発生する情報漏洩事件の原因として**「VPN経由での侵入」**が急増している。
特に旧式VPN装置の脆弱性放置パスワード認証のみの運用多要素認証未対応といった“古い設計のまま”利用され続けているVPNは、攻撃者にとって格好の狙い目だ。
国内外の重大インシデントでも、VPN機器のゼロデイ脆弱性を突かれた例や、退職者のアカウント悪用による不正接続が多数報告されており、「VPN=安全」の時代は完全に終わったと言える。

こうした背景から今、VPNのリプレースは**単なる機器交換ではなく、企業のガバナンスを立て直す“安全保障プロジェクト”**へと変わりつつある。


■ なぜVPNは情報漏洩の原因になりやすいのか

VPNが狙われやすい理由は、技術的な問題だけではなく“運用構造”にも根深い要因がある。

1. 境界モデル依存

VPNに入れば“社内ネットワークと同じ権限”を得られるため、侵害された瞬間に攻撃範囲が一気に広がる。
攻撃者はあえてVPNを狙うことで、侵入後の lateral movement(横移動)が容易になる。

2. 多要素認証未導入の企業がまだ多い

MFA未対応VPNは、攻撃者にとって最も手軽な侵入口。
セット販売された機器でも、運用でMFAが無効化されているケースが非常に多い。

3. 老朽化機器の脆弱性放置

VPN機器はEOSLやファーム更新停止が多く、脆弱性パッチを当てられないケースが実際に起きている。
攻撃者はこの“放置VPN”を自動スキャンで狙い撃ちする。

これらの要因が重なり、VPNは“組織の最も危険な入口”になってしまった。


■ VPNリプレースは“製品置き換え”ではなく“ネットワークの再設計”

VPNを刷新する上で重要なのは、VPNの役割そのものを再定義することだ。

接続対象は何か?

SaaS利用が増えた今、
「すべてVPN経由にする」こと自体がもう時代遅れになっている。

守るべき資産はどこにあるのか?

  • オンプレ資産が多い
  • 工場ネットワークがある
  • マルチクラウド運用が主流
    によって、必要なアクセス経路は大きく変わる。

運用負荷とガバナンスは適正か?

VPN機器保守・拠点装置管理・証明書更新・ルール管理……
どれも人手とコストを食うため、放置されがちで、そのことが“穴”を生んでいる。

こうした現状を踏まえると、VPNリプレースはVPNの延命ではなく
ネットワークの未来図(クラウド・セキュリティ・運用)をまとめて再設計するプロセスであるべきだ。


■ リプレース候補アーキテクチャ(VPNからの脱却度を段階別に)

ここでは“VPN代替”ではなく“現場の成熟度に応じた選択肢”として提示する。

① VPNリプレース(最新VPN+アクセス制限強化)

  • 老朽化環境のリフレッシュ
  • MFA必須化
  • 端末状態チェックの追加
  • SaaS向けトラフィックはVPNを経由させない

最小限の変化でセキュリティを強化。

② ハイブリッド構成(VPN+クラウドゲートウェイ)

  • オンプレ資産をVPN
  • SaaSアクセスはSWG/CASBで直接
  • 拠点回線最適化

VPNの負荷とリスクを削減しつつ段階的に移行可能。

③ ゼロトラスト統合(ZTNA+SWG+EDR)

  • VPNを“必要な業務だけ”に縮小または撤廃
  • ID/エンドポイント起点で全アクセスを制御
  • 原則「入口=VPN」をやめる設計

VPNの仕組み自体に起因するリスクから脱却できる。


■ プロジェクトでつまずきやすいポイント

VPNリプレース現場では、技術より“社内の合意形成”が難所になる。

● 現行維持派の説得

「今のVPNで困っていない」という声に対しては
**“情報漏洩事故の多くがVPNが原因”**という外部事例と、
自社の運用負荷の見える化が効果的。

● レガシー機器・工場ネットワークの影響

PLC・制御系・拠点独自ネットワークがVPN依存しているケースは要注意。
影響範囲の棚卸しが欠かせない。

● VPN停止=ゼロトラスト化と誤解される

ゼロトラストは理念であり、製品名ではない。
VPN撤廃は数ある要素のひとつにすぎない。

■ まとめ:VPNリプレースは「安全と運用の両立」を実現する再設計プロジェクト

VPNを原因とした情報漏洩の増加は、従来型VPNの限界を明確に示している。
そのため、VPNリプレースは単に「次のVPN製品を選ぶ作業」ではなく、

  • 認証とアクセス制御の体系
  • ネットワークのトラフィック設計
  • 端末管理とセキュリティ基盤
  • 運用ガバナンスと拡張性

これらを包括的に見直す重要な機会となる。

VPNの交換を“延命”として捉えるのではなく、
ネットワークとセキュリティの役割分担を描き直す変革プロセスと捉えることで、
クラウド時代に適合した強靭なIT基盤へと移行できる。


■ リプレース候補としての「SmartGate」という選択肢

VPNリプレースを検討する企業では、
「VPNの運用負荷を減らしつつ、クラウド利用に最適化されたアクセス制御をどう実装するか」
という課題がよく挙がる。

その文脈で近年注目されているのが、SmartGate のような“ネットワークと認証を統合的に扱う”ソリューションだ。

SmartGate は VPN の後継を名乗るものではないが、

  • ユーザー/端末の状態に基づくアクセス制御
  • SaaS とオンプレ双方を扱うハイブリッドアクセス
  • ログ・可視化を中心とした運用ガバナンス強化

といった特徴により、
**「VPN負荷軽減」「ゼロトラスト移行の第一歩」「段階的な移行」**といったニーズに適した“リプレース候補のひとつ”として評価されている。

企業にとって最適な答えは一律ではないが、
VPNの老朽化と情報漏洩リスクが高まる今、
SmartGate のような新しい設計思想を持つサービスを選択肢に含めて比較することで、
より現実的かつ安全性の高いリプレース計画を描くことができるだろう。